このところ見守り系のサービスがブーム的に増えている印象を受ける。
実際、Googleで「見守り」と検索しただけで多種多様なサービスがごまんとヒットする。
昔はALSOKなどの業者に頼まなければならなかった仰々しい見守り系サービスが、今やイチ個人が手軽に利用できるまでになった。
なぜここまで急速に見守り系サービスが広がったのだろうか?
その社会的・技術的背景を考えれば、その先の新しいビジネスが見えてくるかもしれない。
目次
広がりをみせた見守り系サービスのカタチ
新しく登場してきた現行の見守り系サービスは、その多くがスマホや家電、IoT機器と連動したサービスだ。
家電機能の一部として、もしくはAmazon Echoやペットロボットのような、家の中にも自然と溶け込むガジェットとしての形が一般的となっている。
- 家の防犯機能(ホームセキュリティ)
- 高齢者の見守り機能
- 子どもの帰宅やお留守番の見守り機能
窓が割られる音を検知して利用者のスマホに通知が行ったり、
遠方に住む高齢者家族に異常がないかを知らせてくれたり、
下校中の子どもの位置が親のスマホから分かったり、
見守りサービスの機能は利用者にとって非常に心強く魅力的だ。
監視してることが伝わってしまうような形では、見守られる側の抵抗感が強くて意識してしまうが、
家電に溶け込んだり、かわいいロボットに形を変えたりしているのは自然体で過ごせるようにとの配慮だ。
「goo of things」のような見守り電球ならなおさら目に入りくいので、すぐに馴染むだろう。
今後も多くの家庭では、見守り系のサービスが(意識するしないに関わらず自然と)増えていくことは間違いない。
見守り系サービスが増えている社会的背景
見守り系サービスが増えてきた背景には主に2つの要因が考えられる。
- 育児と介護のダブルケア世代の増加
- 育児・介護業界における人材不足
晩婚化によって出産年齢の高齢化が進み、親の介護と子育てが被ってしまうケースが増加している。
介護と育児の両方をこなす苦労は想像に難くない。ましてや今は核家族化が進んでいる。
ひと昔前は元気な祖父母に子どもを預け、親は仕事や家事に専念することができた。
子どもが風邪を引いたら、祖父母に面倒を見てもらうことは普通のことだった。
しかし今は核家族化が進んでおり、遠方に祖父母がいる場合はその力を借りることができない。自力で何とかしないといけないのだ。
シッターやファミサポなどの地域サポート受けることもできるが、その都度手続きや費用負担がのしかかってくる。
また、育児介護双方の人材不足も深刻だ。
特に高齢化の今、介護職員の不足は現役世代のさらなる負担増を招きかねない。
人材不足の救世主として、こうした見守りサービスが一役も二役も買っている(もしくは今後の主役となる)のである。
見守り系サービスが増えている技術的背景
技術的な背景としては、見守り(監視)に必要な技術が揃ってきているからだ。
- 画像解析
- 音声(環境音)解析
- ネットワーク利用
- センサーの普及・小型化
AIの進化(ディープラーニング)によって画像や音の解析技術は格段に向上した。
カメラ映像から不審者を検知することはもちろん、高齢の家族が転倒してしまった場合や部屋から長時間出て来なかった場合など、
いつもの生活行動とは違う場合のリスクを常に把握できる。
ほどんどの家では無線LAN(WiFi)が使えるため、異常があればすぐに家族のスマホに通知することが容易となった点も大きい。
また、各種センサーも小型化しIoT機器の普及も進んでいる。
エアコンやテレビ、冷蔵庫、電球、トイレ、さらには炊飯器や電子レンジまでもがネットワークにつながる時代だ。
家中のあらゆる情報をクラウドに送信してデータを収集・解析し、有効活用している。
ご飯を炊いたら家族に通知が行くユニークな見守り機能を持った炊飯器まで登場している。
こういったIT技術の進化が、今般の見守りサービスの普及を支えているのだ。
今後の見守りサービスの行方はどうなる?新規ビジネスとしての方向性
見守りサービスがブーム的に増えてきた今、逆の言い方をすればただ見守る(異常を検知して通知する)だけのサービスは飽和状態にあると言ってもいい。
今は見守りサービスの普及途中の段階であるが、今後広く普及して当たり前の存在になったときに、さらに一歩も二歩も先を行くサービスを考えないとビジネスとしてはやっていけないだろう。
育児・介護業界は人手不足というのが日本の社会課題だ。
例えば介護付き老人ホームに入れなくても在宅介護できるような危険予知のサービスを作ったり、
遠隔での投薬管理や栄養トラッキングなどができるといいかもしれない。
子どもの適切なケアをサポートするアシスタントロボのようなサービスが登場すれば、育児にかかる負担も大きく削減できるだろう。
またセンシング技術もさらに進化していく。
脳波のセンシングを取り入れて睡眠時の状態を監視するなど、メンタルヘルスや健康・医療の分野にも用途が広がっていくとこが予想できる。
いびきや睡眠時無呼吸症候群を音で検知して適切な医療を案内したり、赤ちゃんやペットの泣き声がいつもと違うなどの体調変化も検知できると助かるだろう。
こういった育児・介護の人材不足を補うような画期的なサービスが今後どんどん開発されていく。
そうしたことを “やれる” エンジニアになるために、
- 画像・音声処理
- センシング技術
- データサイエンス
などを今のうちからスキルとして身に付けておくべきだと感じた次第だ。